シュガー*シガレット*シークレット
「……お。落ち着いたか?」



しばらくして、私がようやく顔をあげると、南先生がなんだかホッとしたような声でそう言った。

すん、と鼻をすすって、私はハンカチで顔のほとんどを隠したまま、気恥ずかしい気持ちでちらりと先生を見上げる。



「あの、せんせい……ハンカチ、洗ってから返します……」

「ははっ、そーか? 別にそんなんやるけど」

「いっ、いえ……っ」



左手をパタパタ振って、先生の言葉をありがたくもお断りした。

すると南先生は、そんな私を見下ろしながらまた何か考えるようなポーズをとって。

それを疑問に思うより先に、先生は口を開く。



「……あのさー、思うんだけど。こんなとこでこそこそタバコ吸ってたって、別にそんな悪いことしてるって実感わかないんじゃねぇ? どーせ他にも、影でタバコやってる高校生なんていくらでもいるだろ」

「………」



バッサリ鋭い先生の言葉が、ぐさぐさ、胸に突き刺さる。

う……なんて耳に痛い言葉。

どうせ私、そこまで度胸ないもん……。


図星をさされて若干うつむき気味になった私の上に、「だから、」という続きの声が降ってきた。

それを聞いたとほぼ同時、なぜだかふわりと、両頬を大きな手で包まれて。

そのまま、顔をあげさせられる。
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