ワインお作りします


「そろそろ帰ろうかな。」

二人でしばらく星を見た後。
彼はそう呟いた。

そういえば、店員さんは何も言わなかったけれど、戻れる時間はどれくらいなのだろう。
今日だけならば、あと一言だけ彼に伝えたい事がある。

彼は考え込む私の頭に手を置いて笑顔を見せた。

「逢えて嬉しかった。」

そんな言葉も笑顔も要らない。

私はどんな出会いもなくていい。
彼が居ればいい。

そう何度も願っていたから。

だから。

「お願いがある。」

「お願い?」

私の一言に彼は首を傾げた。

見るだけでは嫌なんだ。
やっと話せたんだから。
店員さんには悪いけど。
私は過去を変えたい。

「死なないで。」

彼は目を見開いた。

そうだろうな…。
私には隠してたハズだから。

だけど。
私は未来を知っているから。

「約束して。」

彼に向かって小指を出した。

「私。何時でも行くから、呼んで。」

何時でも彼が来てくれたように。
行くから。

それを伝えたかった。
昔の私は呼んでもらえなかった。

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