ワインお作りします


のんびりと二人で花見の支度をし、出る頃にはもう昼になっていた。
今はちょうど満開。
天気もすごくいい日だった。

「綺麗だねー。」

「あぁ。」

本当に未来なんてあるんだな。
俺は桜を見ながらぼんやりと考えていた。
まるで夢のようだ。
いや、今でも夢だと思っているけど。

「目が覚めたら絶対来たいと思ってたの。」

「え?」

俺がぼんやりしていると彼女は急に話し出した。

「私、ずっと寝てたでしょ。」

「あぁ。」

「だけど、毎日来てくれた。必ず決まった時間に。」

「当たり前だろ。」

「私、起きれなかったけど。知ってたの。嬉しかった。」

それは知らなかった。
植物人間でも感覚はあるのか?
もしくは植物人間にも色々症状があるのかもしれない。

「だけど怖かった。」

「え?」

俺がまた考え事をしていると彼女の目には涙が溜まっていた。


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