ワインお作りします
大人になるワイン
"ワインお作りします"
路地裏にある小さなお店。
その入口にある看板。
きっと普段なら目にも止まらない。
そもそも未成年はワインなんて飲めないしね。
大人はズルい。
飲んで、酔って、自分を忘れられるんだから。
都合が悪い事は全部忘れる。
お酒のせいに出来る。
そんな大人にはなりたくない…けど、今はそんな大人が羨ましい。
追い出されるのを覚悟で、思い切って扉を開けると、中から葡萄の香り。
ワインって葡萄から作るんだもんね。
中はおしゃれな喫茶店みたいだった。
「いらっしゃいませ。」
不意にすごく優しい声がして、見てみると、シャツを着た男性が立っていた。
「おや?その制服…懐かしいなぁ。」
店員さんはニコリと笑って目を細めた。
「ワイン、高校生でもいいの?」
私の突然の問い掛けに店員さんはクスリと笑う。
「本当はダメですけど…この店にあなたは来れた。だからあなたにはワイン、お作り出来ますよ。」
「飲んでもいいの?」
「イイとは言いにくいですけど…飲めるようにお作りします。」
まるで子どもに言い聞かせるように言う。
だけど、不思議とバカにされている気はしない。
「お酒入れないの?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるかな。」
店員さんはまた楽しそうに答えた。