ワインお作りします
「どういうこと?」
結局お酒を入れないのなら、意味がない。
私には大人みたいに飲んで、酔って、忘れたい事がある。
「大丈夫です。魔法のワインですから。」
店員さんは見透かしたように言う。
そして、ニコニコととても楽しそうに私の前に七色の瓶を並べた。
「どれにします?」
どれも綺麗な瓶だけど、私は一目で一つを決めた。
「これ。」
指差したのは紫。
少し深みがあって綺麗だった。
「紫ですね。あぁ、だからあなたはお店に来れたんですね。」
店員さんは納得したように私と瓶を交互に見る。
「どういうこと?」
「紫は大人になるワイン。大人って定義が難しいんですけどね。」
「全然解らないんだけど?」
一人納得する店員さんにクレームを話すとまた彼はニコリと笑った。
「簡単に言うと、飲むと急に少し年を取るって感じです。」
そんなの非科学的…って言おうとしたけれど、この店員さんにはいくら言っても意味がなさそう。
まるで柳みたいな人だった。
「では。」
楽しそうに棚から取った葡萄を瓶に入れる。
瓶の中では葡萄がくるくる回って液体になっていた。
やっぱり非科学的だ…。