ワインお作りします


「なあに?」

「先輩から…。本当はずっと渡したかったの。」

彼女は目を伏せた。

「先輩から…?」

「うん。」

「いつ…?」

「高校の学園祭の後夜祭の後…。」

「……。」

それはまさに私が告白した後だ。

学園祭の時、告白した。
そしてその場でフラれた。

『ごめん。そういう風に見た事なくて…。』

その後、先輩は私の親友が好き…という噂も流れていた。
実際、先輩が彼女を見ていたり、二人で居た事も目撃されていた。

だから…しばらくは彼女の事も避けた。
良くないって解っていても、どうにもならなかった。

「ずっと渡したかったんだけど…私の事、避けてたでしょ。だから渡せなくて。」

初めて聞いた。

そういえばやたら靴箱とかで声を掛けられた。
その度に理由を付けて逃げてたけど。

「最初は絶対渡そうって頑張ってたんだけど…私も先輩好きだったから…ずっと渡せなくて。ごめんなさい。」

そう言いながら彼女は泣いた。
泣けばいいってものじゃない。

「はい。」

彼女から空模様の封筒を受け取った。




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