ワインお作りします
「先輩、今、しあわせですか…?」
突然の私の問い掛けに先輩はふんわり笑う。
「もちろん。」
その顔は私の親友に似ていた。
同じ顔をして笑う二人。
昨日、二人で放課後、私に報告をくれた時と同じ顔。
悔しいけど、その笑顔が私の好きな笑顔より素敵だったから諦めたんだ。
私は昨日と同じ言葉を先輩に伝えた。
昨日はどうしても伝えられなかった一言を添えて。
「しあわせになって下さい。おめでとうございます。」
「ありがとう。」
先輩はもう一度笑顔を見せた。
その笑顔を見た瞬間。
また視界が揺れた。
*
「戻ってきたんだ…。」
長い夢だった。
本当に夢かどうかも怪しい。
きっとあのワイン屋さんしか真実は知らないんだろう。
ワインを置いてあった場所を見ると、ワインは無くて、代わりに小さなブーケが置いてあった。
おそらく、結婚式の時のブーケ。
(やっぱり現実?)
けれどいる場所は自分の部屋のベッドの上。
間違いなく高校生のまま。