ワインお作りします


「お代は貴女の戻りたい想いです。」

完全に悩み混んだ私に向かって、店員さんはサラッと付け足した。

「戻りたい気持ちは戻れば無くなります。」

「.........。」

そんな笑顔で言われても。
戻ったところで気持ちなんて変わらないし。
と、いうか、過去にほんとに戻れるなんて有り得ないんですが...

「その顔。信じられませんか?」

その言葉に返す言葉もない。
普通に信じられないでしょう。
店員さんは答えない私を見て、やっぱり、と言わんばかりに小さな溜息をついた。

「最初は皆さんそうなんです。騙されたと思って下さい。悪いようにはしませんから。」

笑顔で彼はそう言い切った。

「この瓶を戻りたい気持ちを込めながら持って回して下さい。」

そしてそう言いながら瓶を私の前に置いた。

回したくらいでワインなんて出来ないし、気持ちも消えないと思う。
だけど店員さんは見るからに本気。

ま、いいか。

そんな軽い気持ちで言われたとおり瓶を持って軽く回した。




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