ワインお作りします
私の告白は無視決定。
店員さんは何も聴かなかったかのように、カウンターにいい匂いのする珈琲を置いた。
「ワインはもう出せませんけど。どうぞ。」
彼は笑顔でそう言った。
見つけれないはずの店を見つけて。
無理やり押しかけて。
告白までしたのに…。
高校生だと思って、完全に舐められている。
しかも、私は悔しいのに、店員さんはどこか楽しそうに見える。
「紫のワインはどうでした?」
「どうって…………。」
腹を立てていたのに、不意な質問に戸惑った。
彼は私の気持ちを余所に、自分の分まで珈琲を入れ、のんびり飲んでいた。
「想い、叶いました?」
そう言って真っ直ぐに私を見ながら、彼はカップを置く。
私は、思わずその仕草に見惚れてしまった。
それくらいの仕草でドキドキさせるのはずるいと思う。
「叶った…と思う…というか…。」
「…というか?」
何でこんな事聴くんだろう。
私の止まった言葉に次の言葉を待つように私を覗く。
「カタチが変わった。でも軽くなった。」
「それは良かった。」
私の回答に彼は満足そうに笑った。