ワインお作りします
ワインは瓶の中でさらに色を変えた。
そんなにたくさんのワインを飲んだ事はないけれど、濃くて美味しそうな色に見えた。
「ありがとうございます。完成です。」
店員さんはニッコリと笑った。
私から瓶を受け取ると、コルクをして袋に入れた。
「必ずお一人で飲んで下さい。飲んで酔いが回る頃、貴女は行きたい所にきっといっらっしゃいます。」
そう言いながら笑顔で袋を渡してくれた。
カラン。
お店を出ると不思議な気分だった。
ちょっと心が軽くなるような。
ホントにこんな小瓶で戻れるんだろうか…。
ウサンクサイ。
そう思いながらも家に帰ってワインを入れた。
「きれい。」
グラスの中のワインは優しい色だった。
口に含むと懐かしい味が広がる。
「なんだ。戻らない。」
ちょっと信じた自分に笑いが出る。
子どもみたいな御伽話。
信じてしまっていたみたい。
そんな事を考えながら、半分くらい飲んだ所で、少し視界がボーっとしてきた。