ワインお作りします
「どこか調子悪いのか…?」
気付けば彼は私の頬を伝う涙をぬぐっていた。
¨大丈夫¨の代わりに私は彼に抱きつく。
失ったはずの暖かさにまた涙が出た。
(どうして彼なんだろう…。)
好きな事にずっと気付けずに友達だった。
気付いた時には彼は病気を患っていて、長くはなかった。
けれど。
彼はそれすらも教えてくれなかった。
だから、私は何も知らないまま、彼を失った。
「どうしたんだ?」
何も言わない私に、いつも余裕がある彼は少しだけ戸惑いを見せた。
「いつ、話してくれるの?」
「え……。」
思わず聴くと彼は言葉を失くした。
やっぱり私に隠していた事で、隠したい事だったんだ。
それならそれで、私にも考えがある。
本当は伝えたかった言葉。
「もしもね?」
「う、うん…。」
「私が明日、急に病気で死んだらどうする?」
「………怒る…と思う…。」
彼は戸惑いがちに答えた。