ワインお作りします


次の日。
彼は私に小さな箱を寄越した。

「本当は渡したかった。」

そう言ってくれた箱の中身は約束が込められた指輪だった。

「治ったら式挙げよう。」

それは叶わない約束。
だから、現実には貰えなかった約束だった。

その瞬間、世界が不意に揺れた。





視界がハッキリするとそこはベッドだった。

「夢…か…。」

覚めないで欲しい夢。

だけど。
少しだけ、心が癒された。
逢いたい人に、願っても逢えない人に、逢えた。
それだけでも私は十分だった。

寝起きに水分を取ろうとして、私は固まった。

枕元にはあったはずのペットボトルはなく、そこに夢の中で貰った小さな箱があった。

何回見ても変わらない。
夢は現実になった。
理由は解らない。
これも夢かもしれない。

だけど。
記憶もあった。

最期まで傍にいれた。
そんなはず無いのに。
手に入れた約束と記憶はまるで魔法みたいだった。

おかげで、心は少し軽くなった気がした。





(お姉飲んだかなー?私はどうしよう。)

お姉の部屋から出て来て、ひたすら小瓶と睨めっこ。
どうしても飲んで欲しいのだろうけど、私は忘れたくない。



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