ワインお作りします
最初で最後のワイン
"定休日"
路地裏にある小さなお店。
その入口にある看板。
今日はお休みを知らせる札が掲げられていた。
もちろんドアのカーテンは締まっている。
「今日は休み?」
声の方を見ると小さな黒猫が偉そうに座っていた。
「えぇ。今日は特別です。」
店員さんはニッコリ黒猫に笑顔を向けた。
休みの看板を下げた彼はとてもラフな格好だ。
今日は外を見る限り雨。
まるでバケツをひっくり返したように降っている。
だから何処にも出る気がしない。
こんな日に休みなんて意味がない。
…と思うのは黒猫だけだったようだ。
「今日は2月26日ですから。」
店員さんは満足そうに少し寂しそうに笑った。
「ふーん。」
黒猫は何の日か解らずに首を傾げ、興味がなさそうに返事をした。
返事を確認した後、店員さんはいそいそと楽しそうに料理を始めた。
美味しそうな肉料理にケーキ。
しばらくするとテーブルの上にはたくさんの料理が並べられていた。
「今日、お祝い?」
パーティーのようなメニューと量に、さすがの黒猫も気付き、呟く。
「今日は大切な人の誕生日なんです。」
彼は黒猫に嬉しそうに答えた。