ワインお作りします
―コンコンッ…。
彼が夢に落ちた頃、ドアのノックが聴こえた。
「誰だ?」
今日の看板は定休日。
そもそも彼が仕事をしない日にお客は来ない。
これまでだって一度だってなかった。
黒猫が気になって覗くと、そこにはあの少女が居た。
「黒猫…?こんにちは。店員さんいる?」
間違いなくココへ二回来ている少女だった。
彼女の前に黒猫は出た事は無い。
けれど、黒猫は見ていた。
この前、彼が彼女に忘れる為の小瓶も渡していたはずなのに…。
(飲んでないのか…。)
黒猫は厄介だと思った。
彼の親切はバカな高校生には解らないのだろう。
黒猫は少し呆れた。
「やっぱり居ないのか…。」
彼女は店内を見渡し、彼が居ないのを知り、落胆する。
(仕方ないな…。)
黒猫は溜息をついた。
「おい。」
「え?」
黒猫の声に少女は驚いて振り返った。