ワインお作りします


「あのさ。」

逢えたことに幸せになった後。
伝えたかった事を伝えるべく。
声をかける。

これで最後。

「なあに?」

泣きながら顔を上げる彼女。
涙を拭うと彼女は嬉しそうな顔をする。

「もう。俺の事、忘れていいよ。」

「え?」

「と言うか、忘れて。しあわせになって欲しい。」

彼女の顔はそれは出来ないと語っている。
嬉しい。
だけど…
俺はもう彼女をしあわせにしてあげられない。

少し前に店に来た少女にも渡した小瓶を出す。

「これ。」

「なあに?」

飲んでもらおうと思った。
思ったのに。
言えなかった。

願いを込めて。
彼女にキスを落とす。

最初で最後。

茶色の小瓶の中身。
それをそのまま彼女に。

俺も一緒に。


その瞬間。
もう一度視界が揺れた。






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