ワインお作りします


気付けば戻って来ていた。

(これでいいんだ…。)

俺は忘れていなかった。
やっぱりあんな薬で忘れられる程簡単な気持ちじゃなかった。

気を紛らわそうとして店に降りて行くと、黒猫ではなくて、店に居たのは、あの女の子だった。

「どうしたんですか?」

と言うか、ここに居るって事はあの小瓶飲んでないんだろうな。

けれど。

彼女の告白のおかげで大切な人に逢いに行く勇気が出た。
だからなのか、怒る気にはなれなかった。

「来ちゃいました。」

彼女は嬉しそうにそう話した。
真っ直ぐな少女。
少し羨ましくさえ思う。

「あの小瓶、飲んで欲しいって言ったじゃないですか。飲んでませんね?」

俺の言葉にしまったと言う顔。
面白い女の子。
くるくる顔が変わる。
まるで、俺の大切な人みたいだ。
なんて考えながら少女にお茶を出そうと用意を始めた。

その瞬間。
少女は一言呟いた。

「アレを飲まないと私は死ぬんですか?」

「………。」

黒猫が話したのだろうか。
思わず驚いた。

確かに。
まだ大丈夫だとは思うけど。
少女がアレを飲む前に、死に呼ばれてしまえばそうなる事も考えられる。


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