ワインお作りします


「あの黒猫、ホントの事話してたんだ…。」

俺の反応を見て、彼女は呟いた。
それから少し黙り…顔を上げた。

「あの……あなたはどうしてココにいるの?」

「………。」

「それ、聴いたら、アレ、飲むから…。」

そう言って俯いた。

別に。
話せないわけじゃない。

だけど。

なんとなく。
話す気には今はなれなかった。

…と言うか。

彼女に忘れられた後。
少女が覚えていてくれた事に少し救われた。

死んだ者は、生きている人の中にしか生きられない。

ふと、それが頭に浮かんだ。

「私は…生きているのを諦めたんですよ。」

「え?」

突然話し始めた俺に彼女は驚いた。

「あなたと同じ人間だったんですよ。だけど。自ら生命を絶った。そしたらココに居ました。」

彼女は言葉を無くした。

「それでね。俺が泣かせた分だけ誰かをしあわせにしろって言われたんだ。」

いつの間にか丁寧ではなく、普通の言葉で話す俺の話を彼女は真剣な目で聞いていた。

「同じだけ、しあわせにする事が出来たらココから出れて。もう一度、生まれるんだ。」

彼女は何も言わなかった。
何も言えなかったのかもしれない。


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