ワインお作りします


「では、願いを込めてこの瓶を回して下さい。」

店員さんは笑顔で瓶を目の前に置いた。

回したくらいでワインにはならないけれど…
なんとなく変わる気がして手に取った。

「あ…。」

回した所から中身はさらに色濃くなって。
本当にワインみたいに変わった。

店員さんは私から瓶を受け取って紙袋に入れてくれた。

その時、彼の腕にあった時計が目に入る。
水色の文字盤。
その色が懐かしい気がした。

「その時計…。」

「え。」

「綺麗ですね。」

「ありがとうございます。」

私の言葉に彼は嬉しそうな顔を見せる。

「大切な人にもらったんです。」

ドキッとしそうなくらい嬉しそうに付け加えた。


その後、少し話をして、必ずワインを一人で飲む約束をして、店を出た。


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