ワインお作りします


         ***

「ここって…。」

そこは見覚えがある場所だった。

大切な人と、星を見た所。
そこで告白された事も思い出した。

最後に泣いた場所もそこだった。

「待った??」

急に聞こえた声に振り返ると、そこに彼がいた。

「大丈夫。」

いつもみたいに返事を返す。
その瞬間急に思い出した。

一緒に居た事。
一緒に居られなくなった事。

最後の別れ。

私が忘れていたのは彼の優しさだった。
彼の願いだった。

「ごめんなさい。逢いに来て。」

「大丈夫。」

彼はドキッとするような笑顔を見せた。
それから、彼は当たり前のように隣に並んで星を見上げた。

「伝えたい事、俺にだったんだ?」

やっぱり哀しそうな顔。
気持ちが少しだけ変わりそうになる。

だけど。

伝えたいと思うからここに居る。


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