ワインお作りします


しばらくの沈黙の後。

「わかった。」

彼は観念したように苦笑しながら言った。
それは、最初に彼を好きになった時の顔だった。

「だけど。約束して。」

「うん。」

「絶対しあわせになって。俺と居た時よりしあわせになって。」

「うん。」

「絶対…泣かないで。」

「うん…。」

¨泣かないで¨という彼の方が泣きそうだった。

「ありがとう。」

「……うん。」

やっぱり私も泣きそう。

だけど。

忘れていた時より…
ずっとしあわせだと思う。


その瞬間。
世界が回った気がした。


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