ワインお作りします


「ごめんな。」

泣き続ける私に彼はポツンと言った。
私が涙を止めて彼を見ると、彼は小さく笑った。

「これから何にもしてやれない。迷惑も掛けると思う。」

彼はこれから起きる事を知らない。
それなのに謝られた。

それがますます哀しくなった。

本当に見るだけ。
過去は変わらない。

そう言われた気がして…。

そう思ったら急に口に出来た。

「逃げてもいいよ。だけど…居なくなるのは嫌だ。」

昔。

逢えたなら伝えたかった。
そしたら何か変わっていたかもしれないと何度も思った。

「ごめん。」

彼は力なく笑った。

「嫌だ。」

もう一度目を見て言った。

彼の瞳は一瞬揺れた。
けれど、視線を逸らして夜空を見た。

「あの子、頼むね。」

彼は笑いながらそう言った。
寂しそうに。

逢えても変わらない。

また少し泣いた。


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