四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
朝、夏目から電話があった後、泣きながら薬も飲まずに寝てしまった。


そして今度も、ケータイの鳴る音で目が覚めた。

なんだかずいぶん前から鳴っていた気がする。

起きると熱はひいたようで、さっきより楽になっていた。


「はい。」

「夏目です。」


驚いた。

夏目がまたかけてくるなんて思わなかった。


「先生・・・」

「よく寝てたな。起こしてすまない。」


予想外の優しい言葉に戸惑って、何も言えなかった。

だって先生、さぼりって決めつけたくせに……。


「具合はどうだ。熱は?」

「・・・大丈夫です。」


だめだ。これ以上優しくされるとまた泣いてしまう。


「薬、飲んだか?」

「いいえ。」

「ばかだな。早く飲めよ。」


頬を涙が伝う。


「誕生日おめでとう。」

「え……」


初めて気付いた。

誕生日なんて、ここ最近祝ってもらっていないから、すっかり忘れていた。


「って、小川たちが言ってた。ほんとはおまえのうちでサプライズの誕生日パーティーするつもりだったらしいぞ。」

「うそ、智が……。」

「小倉、泣いてるのか。」

「いいえ、鼻声なだけです。」


そう返すのがやっとだった。


「じゃあ、お大事に。」

「あ、先生、」

「ん?」

「ありがとうございました。」

「いや、じゃ。」


静かに電話が切れた。

最後は泣いてるの絶対ばれてた。

誰にも弱みは見せたくないけど、でも、夏目はもう気付いていただろうからいい。



久しぶりにあったかい涙で、胸がいっぱいになった。
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