四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
そんな頃、父から電話があった。


「詩織、一緒に住まないか。」

「そんなの前に、」

「違う、こっちに来いということではない。お父さんが仕事の本拠地を移して、詩織と一緒に住むということだ。」

「……。私はもう、お父さんなんて信じないから。」

「どうしてそんなこと言うんだ、詩織。俺はお前のお父さんだぞ。」

「お父さんは、ほんとのお父さんはあんなことしない。婚約させたり、なつを殺したり、……しない。」

「それはお前が大事だからだ。お父さんは詩織を幸せにしてあげたいんだ。それには、」

「嘘よ。全部お父さんのエゴ。私が大事なら私の大切なもの、全部奪ったりなんてしない。」


電話を切った。

これ以上父と話していると、具合が悪くなりそうだった。


もちろん、叔母夫婦と暮らしていた時もつらかった。

でも、父に会ってから何もかもが崩れ落ちて行ったように思う。

私がひとつひとつ、大切に積み上げてきた何かが。


「ピンポーン。」


インターホンが鳴る。

誰だろうといぶかしく思って、私はドアを開けた。
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