四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「小倉、お前……。」


夏目とみんなの視線が集まる。

私は唇をかみしめて、うつむいた。


「ほんとに?」


ふと見ると、夏目は一瞬だけ顔をゆがめた後、私に顔を背けるようにして廊下を去っていった。


私は篠原さんを睨みつける。


「性悪女!」

「あなたのことでしょう?同情で彼を誘って、振り向かせようなんて。」


私は夏目を追った。

さすがに我慢できなかった。

今まであったことを、何もかも話してしまおうと思った。


階段を下りていく夏目の背中に向かって呼びかける。

夏目は立ち止まりもせず、こちらを振り返ろうとはしなかった。


「先生!聞いてよっ!」

「見損なったよ。」


その一言に、私は凍りついた。

その間に夏目は私の視界から消えて行った。

私はただその場に立ちすくんでいた。


信じてくれないんだ。


やっぱり夏目は篠原さんを信じるんだ。


当たり前のことに今更気づいて、私は激しく衝撃を受けていた。


そんな私の背中を見つめる、もう一つの目がそこにあることに、気付かないまま――
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