四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
もうすぐ修学旅行だ。

智のおかげもあって、クラスメイトの私に向ける視線はいくらか和らいできた。
みんな修学旅行の話で盛り上がっているからかもしれない。

私は少し、救われた気分でいた。


篠原さんは、私に会うたび勝ち誇ったような視線を向けてくる。

それでいて、小さな嫌がらせをやめようとしない。

この日も実験の時、またひとつ、小さな小さな嫌がらせをしてきた。


「あら、プリントが一枚足りないわね。小倉さん、職員室でコピーしてきてくれる?」

「……。」


私である必要はないのに、わざわざ笑いながら私を指名する。

私は仕方なく立ち上がる。


いつもはここで終わりだった。
このまま、私はコピーしに行くはずだった。

でもこの日は違った。


「篠原さん、ここにプリント一枚余ってますけど。」


教卓の下に入れられたプリントを、夏目が出して、不思議そうな顔をしながら篠原さんを見た。


「あ、……あ、そうでしたか。……小倉さん、あったからいいわ。」

「篠原さん、どうしてどんなところに?」

「さあ、私何やってるんだろ。」


ごまかす篠原さんの顔が引きつっていた。

夏目はますます不思議そうな顔になる。


でも、私が席に着くと、夏目は何事もなかったかのように授業を始めた。


その横顔に、不安の影がよぎったのを、私は知らなかったけれど。
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