四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「詩織!さっきさあ、」


智はもう、私に夏目のことを話さなくなった。

意図的にその話題を避けているというか。

きっと、怖いんだと思う。

誰もかれも、本当のことは怖い。

私も智も、夏目だって本当のことには背を向けている。

だからこそ、壊れないでいられるのだけれど。


でもいつかは向き合わなければならないときが来るだろう。

本当のことを隠していては、誰のことも本気で愛せない。

そして、愛されることもない。

もしも、私が夏目を、智が私を、そして、私が智を、大切に思うなら。

逃げ続けるわけにはいかないんだ。


だいぶ上手になった相槌も、私と智をつなぐには、あまりにも希薄な動作にすぎなくて―――
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