四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
私の言葉に夏目は一瞬、私を見つめた。


「そうか。」


ため息とともに声をもらす。

私の言葉は嘘じゃない。

でも、ほんとでもなかった。


それはただ、私の闇のほんの入り口のひとかけらにすぎない。

しかも、夏目はすでに、そんなこと知っているはずだった。


「理由は分かった。でも、その答えで俺は納得しないぞ。」

「え、」


思わず声が出た。


「奨学金制度もあるから、大学に行きたいと思えば行けないことはない。小倉がどんな未来を描くかは自由だ。」


そうか、言われてみればそうだ。


「あせらせるつもりはないから、ゆっくり考えて今年中には結論を出せ。」

「はい。」


今度は素直に返事をした。


「職員会議さぼるか。」


私がだんまりを決め込んだせいで、15分をずいぶんオーバーしてしまっていた。


「ごめんなさい。」

「なんで謝るんだ。」


電話の向こうで聞いた夏目の優しい声が戻ってきた。


「私、生物の先生になろうかな。」


夏目は何も言わずに微笑んだ。
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