四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
第5章 繋がり合うとき
けんか
そんな状況で、修学旅行がやってきた。
そういえば前に、夏目は楽しみだと言っていたっけ。
今も同じ気持ちでいるのだろうか。
篠原さんと出会って、夏目は本当に幸せになれたのだろうか。
もしもそうなら、私は何も言えない。
夏目の永遠の片思いが実ったのなら、何も言えない。
でもそれにしては、夏目は憂鬱そうで。
どことなく悲しい香りがして。
私はやっぱり、悔しかった。
そんな思いをお互いに抱えながら、沖縄行の飛行機の中、私は智と二人で座った。
最初はいつもの当たり障りのない会話をしていた。
でもあれは智からだったんだ―――
「詩織は、いつになったらほんとのこと言ってくれるの?」
「え……。」
一瞬とぼけようと思った。
でも智の真剣な瞳に、それが許されないことだと分かった。
そして、これが智が私に与えた、最後のチャンスであることも。
「夏目先生のこと、……だよね。」
「それ以外に何があるの。」
「ごめん……。」
智はもう、にこりとも笑ってくれない。
私に、優しい逃げ場なんて、作ってくれない。
「私に一言も言ってくれなかったね。私、親友だと思ってたよ、詩織のこと。」
「言い出せなかった。」
「私が夏目先生のこと、好きだって言ったから?」
「……そうかもしれない。」
「でもそれじゃ、あんまりだよ。私が夏目先生のこと話してる時、詩織は私のこと、嘲笑ってたんでしょ。夏目先生は私にはもっと優しいって。」
「違う、」
「違わない。詩織は私のこと友達だとさえ思ってくれてなかったんだね。」
智の言葉が、ぐさぐさと胸に突き刺さる。
分かっていた。
逃げ続けていれば、いつかこういう時が来るのだと。
でもいざその時が来てみると、刺されるばかりで何も言い訳のできない自分を実感するだけだった。
そこからは二人押し黙って、沖縄に着くまでの時間を過ごした。
謝りたいのに言葉が喉につかえて出てこなかった。
そんな自分がもどかしい。
でも、謝れば済む問題ではないと分かっている。
だからこそ、簡単にごめんね、なんて言えなかったのだ。
とてもとても長い時間をかけて、飛行機は沖縄に着いた。
みんなの気分が浮き立つ中、私たちは沈んだ顔のままだった。
でもしばらくして、智は仲間の元へ去って行った。
いつも私のそばにいてくれた智。
私はついに、一人になってしまった。
そういえば前に、夏目は楽しみだと言っていたっけ。
今も同じ気持ちでいるのだろうか。
篠原さんと出会って、夏目は本当に幸せになれたのだろうか。
もしもそうなら、私は何も言えない。
夏目の永遠の片思いが実ったのなら、何も言えない。
でもそれにしては、夏目は憂鬱そうで。
どことなく悲しい香りがして。
私はやっぱり、悔しかった。
そんな思いをお互いに抱えながら、沖縄行の飛行機の中、私は智と二人で座った。
最初はいつもの当たり障りのない会話をしていた。
でもあれは智からだったんだ―――
「詩織は、いつになったらほんとのこと言ってくれるの?」
「え……。」
一瞬とぼけようと思った。
でも智の真剣な瞳に、それが許されないことだと分かった。
そして、これが智が私に与えた、最後のチャンスであることも。
「夏目先生のこと、……だよね。」
「それ以外に何があるの。」
「ごめん……。」
智はもう、にこりとも笑ってくれない。
私に、優しい逃げ場なんて、作ってくれない。
「私に一言も言ってくれなかったね。私、親友だと思ってたよ、詩織のこと。」
「言い出せなかった。」
「私が夏目先生のこと、好きだって言ったから?」
「……そうかもしれない。」
「でもそれじゃ、あんまりだよ。私が夏目先生のこと話してる時、詩織は私のこと、嘲笑ってたんでしょ。夏目先生は私にはもっと優しいって。」
「違う、」
「違わない。詩織は私のこと友達だとさえ思ってくれてなかったんだね。」
智の言葉が、ぐさぐさと胸に突き刺さる。
分かっていた。
逃げ続けていれば、いつかこういう時が来るのだと。
でもいざその時が来てみると、刺されるばかりで何も言い訳のできない自分を実感するだけだった。
そこからは二人押し黙って、沖縄に着くまでの時間を過ごした。
謝りたいのに言葉が喉につかえて出てこなかった。
そんな自分がもどかしい。
でも、謝れば済む問題ではないと分かっている。
だからこそ、簡単にごめんね、なんて言えなかったのだ。
とてもとても長い時間をかけて、飛行機は沖縄に着いた。
みんなの気分が浮き立つ中、私たちは沈んだ顔のままだった。
でもしばらくして、智は仲間の元へ去って行った。
いつも私のそばにいてくれた智。
私はついに、一人になってしまった。