四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
次に到着したのは、お城の跡だった。
お城自体の姿はもうなく、土台だけが残っている。
沖縄にはグスクと呼ばれるこのような城跡が、いたるところにあるようだ。
ここにも観光客は一人もいなかった。
城跡はずっと上の方まで続いている。
私はところどころ崩れて足場の悪い石段を、夏目に手を引かれながら一歩一歩踏みしめるようにして登って行った。
今日は忘れるんだ。
何もかも忘れて、私が本当に手に入れたいものを、探しに行くんだ。
しばらくして、一番上、天守閣があったであろう場所に着いた。
平らな原っぱのようになっていて、景色が良く見える場所に、大きな石が置いてある。
夏目と二人、そこに腰掛けて、顔を見合わせて笑った。
「なんだか、遠くに来たような気がするな。」
「うん。遠くだね。」
篠原さんからも、父親からも。
そしてそれだけじゃない。
私と夏目の心の奥底にあるものも、今は本州に置いてきたような気分だ。
何年振りだろう、こんなに晴れ晴れとした気分なのは。
「あのさ、」
「ねえ、」
夏目と同時に口を開く。
「何?」
「いや、忘れるって言ったくせに、あれなんだけど……。」
「忘れるんだよ?先生、何を、」
「いや、これだけは聞きたい。」
「なに?」
「詩織は今でも、俺のことを……その、……好いていてくれるのかな、と思って。」
「……うん。好きだよ。当たり前じゃない。先生のこと、好きだよ。」
聞かれたら、胸につかえていた言葉が、するりと喉を通り抜けた。
「それなら……君は、」
「なによ?」
「付き合っている人がいるだろう?」
「え?」
お城自体の姿はもうなく、土台だけが残っている。
沖縄にはグスクと呼ばれるこのような城跡が、いたるところにあるようだ。
ここにも観光客は一人もいなかった。
城跡はずっと上の方まで続いている。
私はところどころ崩れて足場の悪い石段を、夏目に手を引かれながら一歩一歩踏みしめるようにして登って行った。
今日は忘れるんだ。
何もかも忘れて、私が本当に手に入れたいものを、探しに行くんだ。
しばらくして、一番上、天守閣があったであろう場所に着いた。
平らな原っぱのようになっていて、景色が良く見える場所に、大きな石が置いてある。
夏目と二人、そこに腰掛けて、顔を見合わせて笑った。
「なんだか、遠くに来たような気がするな。」
「うん。遠くだね。」
篠原さんからも、父親からも。
そしてそれだけじゃない。
私と夏目の心の奥底にあるものも、今は本州に置いてきたような気分だ。
何年振りだろう、こんなに晴れ晴れとした気分なのは。
「あのさ、」
「ねえ、」
夏目と同時に口を開く。
「何?」
「いや、忘れるって言ったくせに、あれなんだけど……。」
「忘れるんだよ?先生、何を、」
「いや、これだけは聞きたい。」
「なに?」
「詩織は今でも、俺のことを……その、……好いていてくれるのかな、と思って。」
「……うん。好きだよ。当たり前じゃない。先生のこと、好きだよ。」
聞かれたら、胸につかえていた言葉が、するりと喉を通り抜けた。
「それなら……君は、」
「なによ?」
「付き合っている人がいるだろう?」
「え?」