四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
夏目とたどり着いたのは古びた旅館だった。
私たちの他に、お客さんは一人もいないように、ひっそりしていた。
「お部屋はどうされますか?」
「二つ。二つお願いします。」
「かしこまりました。ではこちらへ。」
夏目と私は別々の部屋に案内される。
夏目の部屋の向かいが、私の部屋だった。
「では、ごゆっくり。」
ごゆっくりとするような雰囲気でないことは、女中さんもうすうす気づいているはずだ。
でも、何も疑わずに、そっとふすまを閉じてくれた。
しばらく一人で、静寂の中じっと考え込んでいた。
どう考えても、夏目に悪いことをしてしまったと思う。
こんなことが明らかになったら、何もなくても問題になってしまう。
夏目は仕事を辞めさせられるかもしれないのだ。
「ごめんなさい。」
小さな声でつぶやいた。
別に夏目に聞こえるように言ったわけではない。
ただ、胸を押しつぶしそうになっているその思いを、口にしてみただけだった。
その時、急にふすまが10㎝ほど開いた。
「謝らなくていい。」
「先生……。」
「俺が悪いんだ。責任はすべて俺にある。」
「でも、」
「それに、俺はこの一年だけ教師をして、次の年にはもう研究者に戻るんだ。たとえくびになったとしても、問題ないから心配するな。」
「だからって、嫌な思いするの、先生なのに。」
「大丈夫だよ。……じゃあ、早く寝るんだぞ。俺は、電話を借りて、事情を説明してから寝る。お前、具合が悪かったことになってくれるか?」
「うん、いいよ。」
いたずらっぽく言う夏目につられて、私も少しだけ笑った。
なんだか、大きなはずの問題が、急に小さくなったような気がした。
私たちの他に、お客さんは一人もいないように、ひっそりしていた。
「お部屋はどうされますか?」
「二つ。二つお願いします。」
「かしこまりました。ではこちらへ。」
夏目と私は別々の部屋に案内される。
夏目の部屋の向かいが、私の部屋だった。
「では、ごゆっくり。」
ごゆっくりとするような雰囲気でないことは、女中さんもうすうす気づいているはずだ。
でも、何も疑わずに、そっとふすまを閉じてくれた。
しばらく一人で、静寂の中じっと考え込んでいた。
どう考えても、夏目に悪いことをしてしまったと思う。
こんなことが明らかになったら、何もなくても問題になってしまう。
夏目は仕事を辞めさせられるかもしれないのだ。
「ごめんなさい。」
小さな声でつぶやいた。
別に夏目に聞こえるように言ったわけではない。
ただ、胸を押しつぶしそうになっているその思いを、口にしてみただけだった。
その時、急にふすまが10㎝ほど開いた。
「謝らなくていい。」
「先生……。」
「俺が悪いんだ。責任はすべて俺にある。」
「でも、」
「それに、俺はこの一年だけ教師をして、次の年にはもう研究者に戻るんだ。たとえくびになったとしても、問題ないから心配するな。」
「だからって、嫌な思いするの、先生なのに。」
「大丈夫だよ。……じゃあ、早く寝るんだぞ。俺は、電話を借りて、事情を説明してから寝る。お前、具合が悪かったことになってくれるか?」
「うん、いいよ。」
いたずらっぽく言う夏目につられて、私も少しだけ笑った。
なんだか、大きなはずの問題が、急に小さくなったような気がした。