四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~

解き放たれた悪魔

とりあえず、さっと温泉につかる。

夏目は今頃、電話をしているのだと思うと、胸が痛くてどうしようもなかった。

あんなことして、わがまま言って。

それでも優しく私をなだめてくれる夏目。



部屋に戻ると、夏目の部屋はもう暗くなっていた。



――先生寝ちゃったのかな?



だとすると、説明はうまくいったのだろうか。

聞きたい気持ちをこらえて、私は自分の部屋に戻った。


部屋を真っ暗にして、布団に入る。

今日はどうかしていた。

でも、携帯電話を投げた、あの時の気持ちの高まりが、今もなお収まらなかった。


自分の中にそんなに激しい感情があっただなんて、不思議な気がする。


私は今まで、どんな気持ちも封じ込めて生きてきた。
だから、まさかこんなにも、感情を解き放てると思っていなかったのだ。


静かだと、どうしても隣の部屋が気になる。
物音が聞こえないか、耳を澄ませてしまう。


ここでふすまを開けてしまったら、と思った。
その向こうには、夏目がいる。
私にはない世界を持った、優しい人がいる。


一度考え始めると、止まらない。
好奇心が湧き上がってくる。


そして、私は引き寄せられるように布団から出て、ふすまに手を掛けた。
もう戻れない、と自分に言い聞かせながら。
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