四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
話し終わった私は泣きながら、夏目の布団から這い出した。


こんなことを誰かに話す日が来るとは、思っても見なかった。

でも話してしまったからには、もうその人に愛されることも、その人を愛することも許されなくなる。

ついに、この時がきてしまったのだ。


夏目は止めるかもしれない。


でも、心の奥底で私に対して抱く恐怖は計り知れないだろう。


本当の私を知ってしまったからには……。


「どこへ行くんだ、詩織。」

「さようなら。」

「おい、待て!」


やっぱり。

夏目は優しいから、本心とは別の場所で私を止めようとする。


私は本当のことを言えば、その温かい声に、どれほどすがりたかっただろう。


でも、でも……。


「待つんだ、詩織。」


夏目が意外なほど静かな声で言う。

私の手首をつかんで、優しく、しかし抗えない力で元の場所に戻した。


「どうして、先生、」

「大丈夫。大丈夫だから。」


夏目が強い力で私を抱きしめた。

息ができなくなるほど。


「どうして、どうしてどうしてどうして!どうして先生は優しくするの?私がこんな人だって分かって、どうして優しくするの!」

「理由はないよ。」

「え?」


思わず夏目の顔を見上げると、まっすぐな視線が私を捉えた。


「理由はない。愛することに、理由なんてない。」




アイスルコトニ、リユウナンテナイ……。




「君の過去も、ずるさも嘘も何もかも、何もかも愛したいんだ。……君が俺に対してそうしてくれたように。」


私は心が震えているのに気付いた。

もうこれ以上ないくらい、優しくて、温かくて……。

そして、懐かしかった。


私は無言で夏目の胸に顔をうずめる。

夏目はそっと私の髪を撫でた。

そのまま、先生の隣で眠りに落ちたんだ―――
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