四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
幸せな時
次の朝早く、夏目と二人で宿舎に戻った。
「タクシーを呼ぶとか、何かしら手段があったでしょう!」
学年主任に怒鳴られて、夏目はひとしきり謝っていた。
ごめんなさい、と私も心の中で、夏目に向けてつぶやく。
やはりこういう時に責任をとるのは、私ではなく夏目なのだ。
やっと解放された二人はまだ誰も起床していない廊下を、忍び足で歩いた。
「ごめんね、先生。」
そうささやくと、夏目は微笑んで言った。
「何だよ。共犯、だろ?」
その言葉に思わず吹き出す。
奥にある広間で、バルコニーに出ると、朝の光がきらきらと舞い降りてきた。
遠くから海の香りがする。
隣で夏目が大きな欠伸をした。
「ふぁ~」
私もその声を真似る。真似したら本当に眠くなってきて、欠伸が移ってしまった。
「眠い。」
「俺も。」
顔を見合わせて笑う。
「でも眠いなんてそぶりを見せたら負けだからね!先生!」
「当たり前だ。詩織もな。」
そう言いながらまたもや、二人同時に欠伸をした。
テラスにあった椅子に座る。小さなテーブルを挟んで、夏目と向き合った。
「ちょっとだけ……。」
そう言って机に突っ伏すと、夏目も同じことをした。
腕が触れ合って、焦って顔を上げると、驚くほど近くに夏目の顔がある。
目が合って、微笑みあう。
「夏目先生!」
声が聞こえて、私たちははっと身を起こした。
「小倉も一緒か。まあいい。今日の日程について確認だが、……」
学年主任が夏目に一生懸命説明している。
夏目もうなずきながら話を聴いている。
でも、テーブルの下では夏目と私の小指がつながれていたのだった。
誰にも言わない約束。
このときめきを、私は一生忘れることはないだろう。
そう、一生―――
「タクシーを呼ぶとか、何かしら手段があったでしょう!」
学年主任に怒鳴られて、夏目はひとしきり謝っていた。
ごめんなさい、と私も心の中で、夏目に向けてつぶやく。
やはりこういう時に責任をとるのは、私ではなく夏目なのだ。
やっと解放された二人はまだ誰も起床していない廊下を、忍び足で歩いた。
「ごめんね、先生。」
そうささやくと、夏目は微笑んで言った。
「何だよ。共犯、だろ?」
その言葉に思わず吹き出す。
奥にある広間で、バルコニーに出ると、朝の光がきらきらと舞い降りてきた。
遠くから海の香りがする。
隣で夏目が大きな欠伸をした。
「ふぁ~」
私もその声を真似る。真似したら本当に眠くなってきて、欠伸が移ってしまった。
「眠い。」
「俺も。」
顔を見合わせて笑う。
「でも眠いなんてそぶりを見せたら負けだからね!先生!」
「当たり前だ。詩織もな。」
そう言いながらまたもや、二人同時に欠伸をした。
テラスにあった椅子に座る。小さなテーブルを挟んで、夏目と向き合った。
「ちょっとだけ……。」
そう言って机に突っ伏すと、夏目も同じことをした。
腕が触れ合って、焦って顔を上げると、驚くほど近くに夏目の顔がある。
目が合って、微笑みあう。
「夏目先生!」
声が聞こえて、私たちははっと身を起こした。
「小倉も一緒か。まあいい。今日の日程について確認だが、……」
学年主任が夏目に一生懸命説明している。
夏目もうなずきながら話を聴いている。
でも、テーブルの下では夏目と私の小指がつながれていたのだった。
誰にも言わない約束。
このときめきを、私は一生忘れることはないだろう。
そう、一生―――