四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~

先生と

オムライス……。


夏目と過ごした日々が、ありありと思い起こされて切ない。

オムライスは夏目の好物だと知っていた。

だからたまに、お弁当はオムライスで。

夏目が喜んで食べてくれるのが、何よりも嬉しかった。


――先生、間に合わなかったね。


手紙の上に涙が落ちた。


――信じて待ってるって約束したのに、ごめん。


「ほら、詩織行くぞ。」


ドアの前で父が呼んでいる。

私は観念して、ドアを開けた。

東京に行けば、父も安心するだろう。

その方が逃げることは可能になるから。


その時だった。

インターホンが鳴る。


「ちょっと、冬樹君出てくれ。」

「はい。」


冬樹が玄関へと向かう足音が、階下に響いた。
< 169 / 182 >

この作品をシェア

pagetop