四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
カチャリと夏目がカギを開ける。

中は前に来た時とさほど変わらなかった。


「先生、」


耐えきれずに話しかける。

ん?という表情で、夏目は私に向き直った。


「ご、ご飯作るよ!」


夏目とそれ以上目を合わせていられずに、私は冷蔵庫の中をのぞいた。


「何があるかなあ。あ、卵がある。先生、夕ご飯オムライスはどう?」


こくりと夏目はうなずく。

私は震える手で卵を割った。

いつもは上手くいくのに、黄身が破れてしまった。


そっと夏目をうかがうと、椅子に座ってじっと何かを考えていた。

私は慌てて目を逸らして、料理に専念する。


あの時の私は、出来る限り現実から目を背けていたかったんだ。
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