四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「オムライス、できた。」


料理をテーブルに並べて、夏目の肩をたたいた。

夏目は一瞬驚いたような顔をした後、突然優しく微笑んだ。


「ありがとう。俺、オムライスが一番好きなんだよね!特に詩織のはおいしいんだ!」


明らかに無理をしている声音。

でも、私も乗ることにした。


「そうだよ。私のオムライスは絶品なんだから!」


いただきます、と手を合わせてから、夏目がスプーンですくって頬張った。


「おいしい!やっぱり詩織は料理がうまいな!」

「でしょ!私が奥さんになったら、……私が、……奥さんに……なったら、」


オムライスの上にぽつりと涙が落ちた。


「先生の帰りを待ちながら、いろんな料理を作るんだ。……玄関の窓からはね、坂を上ってくる先生が見えるの。……だから、ちょうどいいタイミングで料理が出来上がるように、」


見ると、夏目も同じように涙を落としていた。


「君は、俺の夢を……叶えてくれるんだね。」


夏目の声が、表情が切なかった。


――ついにここまで来てしまった。


夏目の表情はそう言っていた。


「ほら、もったいないじゃないか。冷めないうちに食べるぞ。」

「うん。」


なんだか、最後の晩餐みたいだった。


もう二度と、夏目と一緒にこうして過ごすことはないのではないかと、一瞬思った。
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