四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
夕方とはいえ、寒かった。

シャワーを浴びても、震えは止まらない。

この震えが、寒さから来ているわけではないのは、分かっていた。


「詩織、大丈夫か?」

「震えが止まらないの。」


夏目はそっと私を抱きしめる。

でも、駄目だった。

一緒の布団に入って、夏目がどんなに温めようとしてくれても、震えは止まらない。

修学旅行の時みたいに、布団と夏目の温もりに包まれながら、私は泣いた。


「先生、」

「ん?」

「だからね、言ったでしょ。」

「何を?」

「私には、悪魔の血が流れているの。」


夏目の抱きしめる腕に力が入る。


「これで、二人目だよ。私は人を殺したの。それも、実の親だよ。両親だよ。」

「それは違う。」

「違わないよ。……先生、見たでしょ?私が、私が……。」

「大丈夫。大丈夫だ。」


どんなに夏目に抱きしめられても、背中を撫でられても、駄目だった。

震えは止まらずに、むしろ激しくなった。


「どうしよう。先生、どうしよう……。」

「逃げよう。」

「え?」

「明日の朝起きたら、逃げるんだ。二人で、どこまでも逃げよう。」


夏目の思いつめた声に、私は思わずうなずいていた。

それしか道がないと、本気で思った。


そして、少しだけ安心した。


気付かないうちに、私は眠りの世界へと引き込まれていった。
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