四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
家に着く。

玄関の扉には鍵がかかっていて、私は自分の持っていた鍵で開けた。


――誰が閉めたんだろう。


きっともう、見つかったんだ。

奥へ行く。

階段を恐る恐る見る。


――ない!


かなり下の方まで転げ落ちたはずの父の遺体は、そこにはなかった。


やっぱりもう、警察は私たちを追いかけていたのかもしれない。

もしも、夏目と逃げても捕まるのは時間の問題だっただろう。


自首しよう。


そう思って、家を出ようとした、その時だった。


リビングにある電話が鳴り響いたのだ。

誰だろう……。

私はすごく気になった。

そして、リビングへと走った。


「はい、早瀬です。」

「県立坂部西総合病院です。早瀬詩織さんはいらっしゃいますか?」


――病院?


「私ですが……。」

「詩織さんですか?やっとつながった。昨日からずっと電話をかけているのですが、つながらなくて。」

「すみません。」

「お父様が、卓也さんが骨折で入院されました。」

「え?!」

「知らなかったのでしょうね、それなら驚くのも無理はないですが。できる限り、」


もう電話の向こうの声なんて聞こえてこない。


驚いた。


本当に驚いた。


父が、死んだと勝手に勘違いしていたのは私たちで、本当は骨折程度のけがだったのだ。



良かった……これで夏目も……!



安心して床にぺたりと座り込んでしまった。

昨日からずっと続いていた震えも、もう止まった。




良かった、と心から思った。
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