四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~

ハンカチ

「詩織!さっき廊下で夏目先生に会っちゃった!」

「今日授業もあるんだから、そんなに気にしなくたっていいじゃない!」

「んもう、分かってないなー詩織ったら。」


智は頬を膨らませる。


「詩織くらい可愛かったら先生の一人や二人わけないのに……。」

「もう、智ったら!そんなこと言って。」


純粋で素直で、智は私なんかよりずっと可愛らしいのに。


「あ!夏目先生来た。もう足音でわかるんだ。」


教室のドアがガラッと開いて、智の言葉どうり夏目が入ってきた。


「号令。」


思えば、夏目はまだ新採用のはずだった。

なんだろう、この貫録は。

夏目が言葉を発すると、それまでうるさかった教室がしーんと静かになるのだ。


「今日は、平常どうりの6校時。放課後は職員会議があるから、職員に用事がある人はそれまでに済ませておくこと。連絡は以上だ。何かあるか。」


無いようなら、と言いかけて夏目は言った。


「小倉、このあと来い。」


夏目の表情からは、何の用事なのか全く判断がつかない。

たまに見せる優しい夏目は、夢であったのかと思ってしまう。

私は、びくびくしながら席を立った。
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