四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
学園祭当日。

私が一人で仕上げたクラス旗も、もちろん審査の対象だ。
今まで参加していなかった分、どうなるか心配で眠れないほどだった。


「詩織ー、クラス旗の発表もうすぐだね!」

「うん。緊張してる。」

「私、まだ見てないんだけど、詩織の旗。」


そう、私は結局誰にも見せずに黙々と進めて、今日の日を迎えたのだ。

しかも、審査発表は学園祭の開祭式。
体育部門の時には応援にも使う、大事な旗。


「では発表に移ります。まず、三位は・・・」


お願い、呼ばれないで。一位じゃないと意味がないの――


「1年2組!」


ほっと息をつく。


「次は、2年・・・」

「来たんじゃない、詩織ー!」

「3組!」


クラスの温度がちょっと下がった気がした。だって、1位はいつもなら、3年1組って決まっているから……。
お願い、と手を合わせる。


「一位は……」


時が止まったように体育館が静かになる。私は耳をふさぎたくなった。


「2年1組!!」


え……。

時がまた流れ出す。
私の周りがやけに騒がしい。

もうーうるさいよ、と言おうとしてみんなが笑っているのに気付いた。


「すごいよ、詩織!3年生に勝ったよーー!!」

「小倉すげー!」

「てか、何あの絵、うますぎー!!」


急に頬が熱くなって、涙が出そうになった。


「なによ、あたりまえでしょ!」


私の怒ったような口調に、またみんなが笑った。


「小倉のおかげで俺ら今年、優勝できるかもよ!!」
「おーっっ!!」


うるさいくらいのみんなの歓声。

去年まで下らないって思っていたことが、やけに大切に思える。


「もう私役目果たしたんだから、あとは任せるから!」

「ばか!おまえ実は足も速いこと、俺は知ってんだからな!」

と言ったのは委員長。


「冗談!」


言いながら、まるで中1の頃に戻ったみたいだと思った。

なんにも無理しないで人と付き合ってた頃の・・・。

私は久しぶりに、心の底から笑っていたんだ。
< 26 / 182 >

この作品をシェア

pagetop