四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「夏目、先生……」
夏目は、虚ろな表情で振り返った。
まるで私を通して、私の後ろの景色を見ているみたいだ。
そして、随分経って、はっとしたように夏目はやっと私を見た。
「あ、小倉。……クラス旗どうだった?」
知らないんだ、先生―――
さっきまでの興奮が、一気に冷めていく気がした。
きっと、夏目は開会式に出ていないだけ。
そんなの、分かってるけど。
「すみません。お邪魔しました。」
なんで謝っているのか腑に落ちないまま、私はなんだかとても申し訳ない気分になって、その場を去った。
考えれば考えるほど悪い想像は膨らんで、苦しくなる。
私は走ってあまり人の通らない、5階へ続く階段までたどりつくと、階段の端に座って、膝に顔をうずめた。
「先生のばか……。」
あの横顔。
あの眼差し。
夏目は、一体誰のことを考えているんだろう―――
ちょっとしたことでは揺らがないはずの夏目が。
あんな風に、切ない目をして窓の外を見つめているなんて。
呼びかけても、気付かないくらいに。
何かある。
きっと、何かあるんだ。
私なんて、1パーセントも関係していない何か。
先生を、悲しくさせる何かが。
そこには高校生の私には、立ち入れない大人の世界がきっとあるんだ。
私は、無性に悲しくなってしまった。
夏目は、虚ろな表情で振り返った。
まるで私を通して、私の後ろの景色を見ているみたいだ。
そして、随分経って、はっとしたように夏目はやっと私を見た。
「あ、小倉。……クラス旗どうだった?」
知らないんだ、先生―――
さっきまでの興奮が、一気に冷めていく気がした。
きっと、夏目は開会式に出ていないだけ。
そんなの、分かってるけど。
「すみません。お邪魔しました。」
なんで謝っているのか腑に落ちないまま、私はなんだかとても申し訳ない気分になって、その場を去った。
考えれば考えるほど悪い想像は膨らんで、苦しくなる。
私は走ってあまり人の通らない、5階へ続く階段までたどりつくと、階段の端に座って、膝に顔をうずめた。
「先生のばか……。」
あの横顔。
あの眼差し。
夏目は、一体誰のことを考えているんだろう―――
ちょっとしたことでは揺らがないはずの夏目が。
あんな風に、切ない目をして窓の外を見つめているなんて。
呼びかけても、気付かないくらいに。
何かある。
きっと、何かあるんだ。
私なんて、1パーセントも関係していない何か。
先生を、悲しくさせる何かが。
そこには高校生の私には、立ち入れない大人の世界がきっとあるんだ。
私は、無性に悲しくなってしまった。