四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~

赤点

あの日以来、夏目と一言も話していない。

もちろんあんな態度をされた後に、話しかける勇気はない。

その上、私の思い込みかもしれないけれど、夏目は私を意識的に避けているような気もする。


結局、私たちのクラスは健闘の末、学園祭で総合準優勝だったけれど、私はちっとも喜べなかった。

また前の私に戻ってしまったようだ。


クラス担任としての夏目は、今までとなんら変わりなく、淡々としていた。

智の絡みにも、いつもの調子で返し、声をあげて笑うこともあった。

でも、授業では私を指さなくなったし、目さえ合わせてくれない。

一体、どうしてしまったと言うのだろう。



そうこうしているうちに、前期の定期試験がやってきた。

でも、いつもみたいにやる気が出ない。

満点を取ったところで、夏目の態度が変わるとは思えなかった。


一日目。


数学、現代文、そして生物……。

生物の問題用紙を見ていたら、泣きたくなってしまった。

思えば、夏目の作ったテストを受けるのはまだ二回目だ。

最初は春の課題確認試験。

あの時は96点で、悔しかった。

だけど夏目はよし、ってうなずいてくれた。

今度はきっと、満点を取ったところで、夏目は切なく笑うだけなんだろう―――


いろいろ考えているうちに、チャイムが鳴った。

私は、信じられない気持ちで白紙の解答用紙を眺めた。

慌てて名前を書いて、裏返す。

心臓がバクバクと音を立てる。



――何やってるの、私……。
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