四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
思い足を引きずるようにして階段を上り、生物準備室の扉をノックした。

昨日は一睡もしていない。

打ち明けたいと思う夏目はもういない。


「失礼します……」


扉を開けると、夏目と久しぶりに目が合った。


「小倉……。」


こくら――


夏目の声が、すとんと胸に落ちる。


「はい。」


答えると同時に、涙が頬を伝う。


夏目の視線を感じながら、我慢できずに両手で顔を覆った。


「どうした。」


夏目が近づいてきて、心配そうに肩に手を置く。


「お前も色々大変だな。」


優しい声で夏目が言う。

以前の夏目が戻ってきたような気がして、私は嬉しかった。


そして、夏目は私の顔を覗き込みながら言った。


「補習でもやるか?」


うなずくと、よろしい、と言って笑う夏目がそこにいた。
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