四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
補習はプリントだった。

夏目が自分のために用意してくれたと思うと、申し訳なかった。

すらすら解く私の手をじっと見つめながら、夏目は考え込むような表情をしていた。


「これで補習とか、まったく。俺の出番はないじゃないか。」

「ごめんなさい。」

「素直に聞いとく。」


夏目が用意したプリントは、結局1時間足らずで終わってしまった。


「じゃあ、今日はこれで終わりだ。お疲れ。明日はテストだから覚悟しておくように。」

「先生、」


考えるより先に声が出た。


「ん?」

「帰りたくない。」


夏目は急にはっとした顔をすると、私から目をそらした。


――え……先生。


「帰れ。」


夏目の顔が怖かった。
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