四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「そっかぁ、俺のことなんにも聞いてないかー。」
早瀬は、私の話を聞いて、あきらめたように笑った。
私は母子家庭で、物心ついたときには母と二人暮らしだった。
大きくなるにつれて、私にはお父さんがいないんだな、と子供心に理解した。
でも母は、私に父親の名前さえ打ち明けようとはしなかったし、私もあえて聞かなかった。
もちろん、寂しく感じることもあった。
だけど、私は母との二人暮らしに何も不足を感じたことがなかったから、そんな思いはいつのまにか消えていた。
でも今、頼れる肉親が叔母だけだと思っていた今、父親と名乗る人が現れたことは、私にとって救いになるかも知れなかった。
「早瀬さんは、どうして私を。」
今更、と言おうとして口をつぐんだ。
「詩織ちゃんを迎えにきた。」
え、と間抜けな声が出る。
「お母さん亡くして、つらかったね。よく一人で耐えたね。父さん、間に合わなかったんだ。ごめんな。」
「間に合わなかった、って?」
「詩織ちゃんのお母さんと約束したんだ。もしも俺の仕事が軌道に乗ったら、また迎えに行くって。それまで、俺が迷惑かけるわけにはいかないから。」
遅すぎた、早瀬は苦い顔でつぶやいた。
「早瀬さんは、本当に……」
「なに。遠慮なく聞いて。」
私は首を振った。
返事を聞くのが怖かった。
暗闇に降りてきた一筋の光に、できることなら背を向けたくなかったのかもしれない。
「とりあえず今日は、叔母さんの家に送るよ。叔母さんとも、今後話し合っていかないとならないから。」
「はい。」
早瀬はにっこり笑った。
本心を出さないところが自分にそっくりだ、と私は思った。
早瀬は、私の話を聞いて、あきらめたように笑った。
私は母子家庭で、物心ついたときには母と二人暮らしだった。
大きくなるにつれて、私にはお父さんがいないんだな、と子供心に理解した。
でも母は、私に父親の名前さえ打ち明けようとはしなかったし、私もあえて聞かなかった。
もちろん、寂しく感じることもあった。
だけど、私は母との二人暮らしに何も不足を感じたことがなかったから、そんな思いはいつのまにか消えていた。
でも今、頼れる肉親が叔母だけだと思っていた今、父親と名乗る人が現れたことは、私にとって救いになるかも知れなかった。
「早瀬さんは、どうして私を。」
今更、と言おうとして口をつぐんだ。
「詩織ちゃんを迎えにきた。」
え、と間抜けな声が出る。
「お母さん亡くして、つらかったね。よく一人で耐えたね。父さん、間に合わなかったんだ。ごめんな。」
「間に合わなかった、って?」
「詩織ちゃんのお母さんと約束したんだ。もしも俺の仕事が軌道に乗ったら、また迎えに行くって。それまで、俺が迷惑かけるわけにはいかないから。」
遅すぎた、早瀬は苦い顔でつぶやいた。
「早瀬さんは、本当に……」
「なに。遠慮なく聞いて。」
私は首を振った。
返事を聞くのが怖かった。
暗闇に降りてきた一筋の光に、できることなら背を向けたくなかったのかもしれない。
「とりあえず今日は、叔母さんの家に送るよ。叔母さんとも、今後話し合っていかないとならないから。」
「はい。」
早瀬はにっこり笑った。
本心を出さないところが自分にそっくりだ、と私は思った。