四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「ねえ、先生ってどこに住んでるの?」

「秘密だ。」

「どうして?」

「女子生徒を家に呼んだとか言われたら、厄介なことになるからな。」

「なにそれ。私が家に行くと思ってるの?」

「いや、そういうことじゃなくて。だって……」


夏目は急に歯切れが悪くなる。


「教えてくれないなら別にいいもん。」

「あ、そう。別にいいならいい。」


夏目はふいとそっぽを向く。

その子供みたいな仕草が可愛らしくて、笑ったらまた怒られた。


「血液型は?」

「O型。」

「一緒なんだ!」

「誕生日は?」

「2月14日。」

「冗談でしょ?」

「ほんとだ。」

「最高かもしれないし、最悪かもしれない日なわけだー!」

「基本的に最悪だ。」


そんなどうでもいい話をしながらご飯を食べた。

誰かと一緒にご飯を食べるって、こんなに楽しいんだと思った。


「小倉、自分でお弁当作るの?」

「うん。」

「そうか。いいお嫁さんになれそうだな。」

「何よ。先生のってこと?」

「ばか。」


夏目は口癖のようにばか、って言う。

でもその響きさえ、私は好きだった。

否定してるんだけれど、完全に否定しきっているわけではない。


そんなあいまいさが心地よかった。
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