四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
外はもう真っ暗で、土砂降りの雨が降っている。

隣には運転をする早瀬がいる。

私はまた一人ぼっちになってしまった。


「東京にはね、俺が持っている中で一番大きな家があるんだ。ついこの間、詩織の部屋も作らせた。きっとびっくりすると思うよ。ベッドも机も上質なものばかり取り寄せたからね。すぐにそんな生活にも慣れるだろう。何一つ不自由ない暮らしをさせてあげよう。」

「……。」

「どうした、詩織。楽しみじゃないのか?」

「……。」

「友達だってすぐできるぞ。詩織は成績がいいらしいじゃないか。君に釣り合うような頭のいい子たちがたくさんいる
よ。」

「……あの、早瀬さん。」


そう呼びかけると、早瀬は明らかにがっかりした顔をした。

返事もなく、前を向いたままだ。


「お、お父さん。」

「うん?」


早瀬が笑った。

本当に満足そうに笑った。

その笑顔を、何故か鳥肌が立つくらい、不快に感じた。


「なんだ?詩織。」

「本当に私のこと、大切?」

「当たり前じゃないか。」

「本当?」

「本当だよ。」


その時、視界の端に学校が映った。


「お父さん、」

「ん?」

「大切なら、私のこと大切なら……止めて!車を止めて!」

「え」

「早くっ!」


早瀬はあっけにとられた顔で車を止めた。


「どうした、しお、」



バタン!!



私は、車のドアを思い切り閉めて、闇の中へと飛び出して行った。
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