四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
暗い夜道に、足音が聞こえる。

私は、はっと身を強張らせた。

足音が階段を上ってくる。

背筋が寒くなる。


真っ黒な影が階段を上りきって、すぐ近くまで迫っていた。


「誰だ?」

「先生……。」


街灯の光でぼんやりと浮き上がったのは、紛れもなく夏目だった。

なんだか、随分久しぶりに会ったような気がして、私はただ夏目を見上げていた。


「小倉……。いつからいたんだ?」

「分からない。でも、ずっと前から。」


暗くて夏目の表情はよく分からない。

でも、深くて長いため息が聞こえた時、大体予想できた。


「もう来るなと言っただろう。」

「……だって。」


立ち上がって夏目の前に立った。

たじろいで夏目は一歩後ずさる。




「会いたかったの。……先生に会いたかったの!!」




夏目はしばらく私を見つめていた。

時が止まったように思えた。




「風邪ひくぞ。入れ。」




夏目が部屋のドアを開けて、私の背中を押した。

暖かい電気の色が目に染みて、私は目を眇める。


ただいま、と、そう言いたい気分だった。
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