四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
シャワーを浴びて冷えた体を温めた。
夏目が貸してくれた、私にはちょっと大きいトレーナーを着る。
「大きいか?」
ドアを一枚隔てて夏目の声がする。
「うん。ちょっとね。でも大丈夫。」
濡れた髪はそのままにして、私はドアを開けた。
夏目が一瞬目を逸らす。
そんな夏目が、私は愛しかった。
落ち着いてから、夏目が温かいコーヒーを入れてくれた。
「夏休みが明けるまであと9日だ。」
「うん。」
「なぜそんなに必死になって、俺のとこなんかに来た?」
「……。」
「これだけは答えてもらうぞ。いくらお前が答えたくないと言っても。」
「……。」
「家の人となんかあったのか?そうだろ。」
「……。」
「うなずくくらいしろ。そうじゃなきゃ分からないだろ。」
「先生。」
「ん?」
「私のこと大切?」
「……え?」
「先生としてでもいい。私のこと、大切?」
夏目はしばらく迷った後、きっぱりと言い切った。
「ああ。大切だよ。」
「じゃあ、あの人と一緒だね。お父さんと、一緒だ。」
「お父さん?」
「お父さんも私のこと大切だって言ってくれた。でも、先生もおんなじなら、私……行かなくていいよね。お父さんと
一緒に行かなくっていいよね?」
「待て、どういうことだ。」
夏目が急に真剣な顔で身を乗り出した。
「お父さんと会ったのか。一緒に行こうって、そう言ったのか?」
私はこくりとうなずいた。
「どこに?ここのそばか?」
「ううん。東京。」
「え?」
「転校すればいいって。あの人が。」
「いつ言われたんだ?」
「昨日。」
「何故学校で言わなかった?」
夏目は苦しそうに顔をゆがめた。
「行かなくていいよね。」
随分長い時間が過ぎた後、夏目は深いため息とともに言った。
「行った方がいい。」
頭の中が真っ白になった。
夏目が貸してくれた、私にはちょっと大きいトレーナーを着る。
「大きいか?」
ドアを一枚隔てて夏目の声がする。
「うん。ちょっとね。でも大丈夫。」
濡れた髪はそのままにして、私はドアを開けた。
夏目が一瞬目を逸らす。
そんな夏目が、私は愛しかった。
落ち着いてから、夏目が温かいコーヒーを入れてくれた。
「夏休みが明けるまであと9日だ。」
「うん。」
「なぜそんなに必死になって、俺のとこなんかに来た?」
「……。」
「これだけは答えてもらうぞ。いくらお前が答えたくないと言っても。」
「……。」
「家の人となんかあったのか?そうだろ。」
「……。」
「うなずくくらいしろ。そうじゃなきゃ分からないだろ。」
「先生。」
「ん?」
「私のこと大切?」
「……え?」
「先生としてでもいい。私のこと、大切?」
夏目はしばらく迷った後、きっぱりと言い切った。
「ああ。大切だよ。」
「じゃあ、あの人と一緒だね。お父さんと、一緒だ。」
「お父さん?」
「お父さんも私のこと大切だって言ってくれた。でも、先生もおんなじなら、私……行かなくていいよね。お父さんと
一緒に行かなくっていいよね?」
「待て、どういうことだ。」
夏目が急に真剣な顔で身を乗り出した。
「お父さんと会ったのか。一緒に行こうって、そう言ったのか?」
私はこくりとうなずいた。
「どこに?ここのそばか?」
「ううん。東京。」
「え?」
「転校すればいいって。あの人が。」
「いつ言われたんだ?」
「昨日。」
「何故学校で言わなかった?」
夏目は苦しそうに顔をゆがめた。
「行かなくていいよね。」
随分長い時間が過ぎた後、夏目は深いため息とともに言った。
「行った方がいい。」
頭の中が真っ白になった。