四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~

安堵

車に乗ってから、早瀬はずっと無言だった。

私はなつを膝の上に乗せて、親鳥のように温めていた。

もう景色は見ないことにする。

どうせ忘れたくても忘れられないほど、鮮やかに記憶に残っているのだから。


車に揺られて、30分ほど経っただろうか。

突然早瀬が車を止めた。

窓に打ち付ける雨の音だけが、響いている。

私は恐怖さえ覚えた。


「着いたよ。」


早瀬が疲れたような声で言った。


「え?」


意味が分からない。

ここから東京まで、最低でも3、4時間はかかるはずだ。


私は、早瀬を疑い深い目で見上げた。
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